不動産購入を躊躇されている方の多くは、長期の収支が見えないからだと思います。
私も何度も何度もシミュレーションを再考しては数値を上げ下げして思ったのは、確かにこれは想定次第で結果が大きく変わってしまいシミュレーションだけでの判断は難しいなということです。
例えば全く同じ物件でも金利上昇をどう見積もるかで結果は全く変わりますし、家賃下落率や入居率も判定を大きく左右します。
世界的なインフレが続く中で現物資産を保有している方が一気に資産額を増やしたように、物価上昇の影響も加味するともはやどうなるかなんて結局運次第ということになるわけです。
本日は不動産投資を検討する投資家を悩ませる収支シミュレーションについて私なりの考え方を書いていきたいと思います。
シミュレーションの前提となる希少性により担保される土地
シミュレーションの話を始める前に希少性と土地値について触れたいと思います。
希少性の例についてここで新築区分マンションを取り上げてみます。
これだけ巷で悪く言われている新築区分マンションですが結局30年後に蓋を開けてみたら値段がかなり上がってました、となる確率も無くは無いわけです。
値段上昇を狙う時に見るべきは「希少性」です。希少性が高いほどに値段が上がる確率も上がります。
例えば同じ新築区分マンションにしても、超一等地に建っているブランドマンションと少し外れた似たような物件が大量にある地域では将来の価値が全く変わってきます。
ほぼ無尽蔵に建てることが出来るのであれば価値を維持することは出来ないと考えるべきでしょう。ある一定の希少性が将来価格を決める上では重要になるわけです。
そして土地についても優良な土地には限りがあります。特に都心好立地は面積に限りがあり、これが希少性とその価値を担保します。
私が都心一棟アパートに拘るのはこれが理由で、限られた利便性の高い朽ちること無い土地は必ず一定の価値を保ち続ける事が分かっているからです。
木造アパートは最後には必ず土地が残ります。この土地の値段が下がらない想定と言うのがシミュレーションの根底にあります。逆に言うと都心部の土地が価値を無くす未来が見えた時点でロスカットが発動します。
ただ社会インフラが限られた土地に集積されていくのは明らかなので、今時点で都市部土地値の下落は起こらないと考えています。それはコロナでリモートワークが普及しても変わりません。
水道、電気、ガス等のライフラインや病院、スーパー、レストランは幅広く田舎にまで普及できないというのが現実解になります。
ですので私は不動産投資は大都市に限定しています。一都三県、大阪、名古屋。足を延ばしてもせいぜい福岡、広島までです。
もちろん銀座のど真ん中の土地ほどに希少性は不要です。それなりに良いと思える土地。それだけで十分に貴重で希少性があります。
この前提を置いたうえでシミュレーションを組みます。
具体的な不動産収支シミュレーション方法
それでは前述の理解を確認したうえで、私が採用しているシミュレーションについて書かせて頂きます。
前提:都心部(一都三県大阪名古屋)の新築アパートを35年運用。土地は希少性利便性が高く(駅徒歩10分以内等)、戸建用地てとしての出口も見込める場所。
・人口減少と入居率を連動。30年後の人口減少が30%であれば入居率も30%下げる。単身世帯数の推移も同時に確認。
・家賃は年間1%ずつ下げる。(30年で―30%)
・土地値は変わらない。建物価値は30年でゼロ。
・金利は5年後から年間0.1%ずつ上昇する。(10年+1%)
・インフレ率は考慮しない。売却手数料は別途計算。
・運用経費と固定資産税合わせて家賃の20%。
これで10年、20年、30年後の出口利益を確認し、黒字幅が増えていれば検討対象に上げます。
20年後までであれば人口動態もデータで確認できますので、その動向を見つつ想定通り行った場合とロスカット時の出口損益(売却価格を実勢利回り+1%する)を見るようにもしています。
現在保有する名古屋市のアパートで上記シミュレーションを行うと以下の様になりました。(自己資金は諸費用のみのフルローン、金利1.8%、35年返済)
金利上昇を織り込んでいるため利益の伸びが途中鈍化していきますが、返済が進んで段々と金利上昇にも打ち勝って利益が積み上がっていきます。これは裏を返すと自己資金を始めに多めに入れて借入期間も短くしておけば金利上昇に相当強くなるということでもありますね。
累積キャッシュフローは―1431万円となりましたので、逆に言えば初めに自己資金を同額程度入れておけば35年間持ち出し不要となることを意味します。
そして実際の経営状態はどうかと言いますと、金利上昇は起こらず家賃下落も入居下落も起こっておらず、現在500万円ほどの含み益もありますのでシミュレーションで今後の見通しを確かめつつ実際の経営も想定以上に健全に進められていることが確認できます。心理的にも安心して物件を維持できています。
それではもう一つ参考としまして、自己資金を2000万円、金利1.2%の22年返済の場合のシミュレーション結果になります。
これであれば累積キャッシュフローはプラス(持ち出し無し)となり、20年で売却すれば+2287万円(自己資金と合わせて4287万円が戻ってくる)、売らずに運用を続ければローン完済後の23年目以降は毎年300万円ほどの手残りとなって来ます。不動産には自己資金2~3割入れなさいと言われる理由が良く分かりますね。
後は物件の希少性(将来価値)を重視するのか収益性(現在キャッシュフロー)を重視するのかを投資目的と照らし合わせ、物件購入を判断すれば先の見えない長期ローン返済にもある程度の確信を持って臨めると思います。
都心部家賃はここまで下がらず土地値もじわじわ上昇を続けるため実際はかなり上振れするとは思いますが、シミュレーションは多少悲観的に行うのが良いと思います(あまり悲観的にし過ぎないでください)。このシミュレーション結果と購入したアパートの実績を常に比較しながら自身の考えにフィードバックを入れています。
経営状態の定期確認と軌道修正のためには自身で作成したシミュレーションが絶対に必要となりますね。
最後はやっぱり好きかどうか、楽しいかどうか、そしてその物件が愛せるかどうか。しっかり目利きをしましょう。
以上が数値上でのシミュレーションについてでした。
シミュレーションについては大体これで良さそうに感じていますので、これからは物件を目利きする能力を高めたいですね。
土地の種別や接道に実勢評価、どんな立地が入居者に好まれるのか、周辺の競合物件の家賃や入居状況、建物の仕様はどうすれば維持コストが低く性能は高く、周辺にどんな名所がありこれからその地域でどういった開発が進められるのか。
現地を見学し、その場の空気感や匂いや騒音、周辺施設を目視確認し、駅まで歩いてみたり近所のスーパーまでの道を歩いてみたり実際の生活を想像しながら気に入るかどうかを確認します。
そういった知見を蓄えながら段々と目利きの精度を上げていきたいですね。
同じ様な立地、間取り、仕様でも明確な物件の良し悪しがあります。例えば北側採光の外階段と南側採光の内階段物件が同じ様な場所にあればどちらを選ぶかは明白です。
いきなり最高の物件を買うことは出来ませんし業者も中々良い物件を紹介してくれませんので、勉強だと思ってリスクを評価しながら積極的に購入を進め、不動産投資家としての能力を高めていきたいと思います。
始めは見通しの立ちやすい低リスクな都心新築アパートから始め、段々と資金力や実績が付いてきたらより収益性の高い不動産にもチャレンジしていきたいですね。
それでは皆様の参考になりましたら何より幸いです。